親父
僕が書くということができる要因のひとつに、親父がいる。
家の親父は、真面目なサラリーマンであり、真面目な父親である。
日本のお父さんよろしく無趣味で、休みの日などゴロゴロしっぱなしだ。
この親父、僕のまだ小さい頃から、実にいろんな話をしてくれた。
人を笑わすのが好きな性分なのだろう、おもしろおかしく語ってくれた。
ちょっと長島が入っているので、「ガッと!」とか「スパァッと!」とか擬音が多い。
しかも、かなりオーバーな話になっていて、うそっぽい内容もまれにあったのだが、僕は親父の話が好きだった。
こんな親父に育てられた為、小学校の高学年のときの夢は「漫才師」か「落語家」だった。
ちょうど第二次漫才ブームとも重なり、テレビを見まくり、落語のカセットを聞いたりした。
時を同じくして、おねえちゃんに興味を持ち出したのだが、何しろチビで頭もよろしくなく、運動音痴で根性もないときたもんだから、残された道は笑いで攻めるしかなかったという理由もあった。
いかに他人を笑わかすか。
いかに、おねえちゃんの気をひくか。
これが、少年時代のテーマだった。
常に何かに目を向け、ネタをさがした。
そして、話の組み立てを頭の中で考え、オチまでどう持っていくか悩んだ。
勉強なんぞ、どうせやっても無駄なので、時間はそれに費やしていた。
そして、そのまま大人になってしまったのだ。
もし親父が無口な人だったら、僕はさらに地味な人間だったろう。
地味で運動音痴でアホで根性なしで酒好きで・・・。
ダメ人間じゃん・・・。
親父。
ありがとうね。