榎土敦之のコラム「ルパン」

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ルパン

子供の時、人生最大に勉強がきらいだった僕は、いたずらが大好きだった。

たまにやったのが、「ルパン」。

昼前にお腹がすくと、実行。
自分の弁当を食べると、昼の分がなくなっちゃう。
そこで、体育で出払っている教室に忍び込み、誰かの弁当を食べちゃう。
そして、弁当箱の中に「弁当は頂いた。ルパン」て書いた紙をいれておく。
で、昼になったら、こっそりソイツがその紙を見る顔を楽しみにいくのだ。

ソイツは、いきなり不思議そうな顔をする。
カバンから弁当包みを持った瞬間、ものすごく不思議そうな顔になる。
弁当箱を振ったりもする。
それまで喋っていても、必ず無言になる。
そして、妙にゆっくり結びをほどく。
でまた、箱を振る。
さらに、ゆっくり蓋を開けるのである。

次は、固まる。
彼の目には「弁当は頂いた。ルパン」の文字が映っているハズである。
(そんなに何回も読まなくたって)って思うほど、長時間固まる。
そして最後に、こう呟くのだ。

「ルパンだ」

ここで、作戦は完了する。

不思議なのは、ほとんどの人が「ルパンだ」って言うことだ。

体育も終わって、腹が減った。「さぁ。メシだ!」って時に、予想もつかない事態に遭遇してしまう。そこには、ルパンからの手紙。

んなわけないじゃん。
冷静に考えたら、そんなわけないのは、すぐわかる。
ルパンであるわけがない。

しかし、「ルパンだ」って言うのである。

人はパニックになると、どんなデマな情報でも信じてしまうものである。
もちろん、後々間違いであることに気付くのだが。

「ルパン」って言った彼らも、必ず気付くのである。

ここで、僕は声を大にする。
そんなことで、もし地下街にいて大地震が起きたらどうするのか!?
冷静さを欠いて、とんでもないことになってからでは遅いのだ。
もっと落ち着いて行動することを、覚えて欲しい。

そういう意味では、非常に実践的、且つ教育的な指導ができたと、たいへん満足している。

って今日、弁当を食べていて、ふと思い出した。