榎土敦之のコラム「正確」

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正確

家に、壁掛け時計が3つある。

その他、目覚まし時計2つ。
時計機能がついているものがビデオ、ステレオ、電子レンジ、電子ジャー、携帯等々。

ものすごい数だ。
別に、時間が気になって気になって仕方が無いわけではない。
その証拠に、すべて、示している時間がバラバラなのだ。

無論、誤差というのは±5分程度のもの。
おそらくみなさんの部屋でも、同じ状況だろうと思う。

ところが、僕の家には1つだけ変わった時計がいる。

クマのプーさんの壁掛け時計だ。

この時計、ものすご~く遅れているのだ。
軽く2時間はズレている。
というか、気付いたらその誤差だったので、遅れたのか、ものすごく進んでいるのかは、解らないのだが。

掛けている場所は、ベットの上辺り。
必ず、毎日見ているはずだ。
なのに2時間もズレていることに、2時間ズレてから初めて気付いた。

突然、そこまでズレるというのは、考えにくい。
除々にズレていったと考えるのが妥当である。
その証拠に、いまだにズレていっている。

信用させておいて、ちょっとずつ誤魔化していく。
まるで、客から預かった株の運用資金を着服しちゃってるみたいだ。
おい! 
そうとうな罪ではないか!
かわいらしく、プーさんを身にまといやがって!

しかしながら、これは、かなり高度な技である。
毎日何回もチェックされているのに、気付かせない。
奴は、そうとうな“やり手”だ。

だが。
こちらも、騙され続けるようなバカではない。

そう。
奴に対して、気付かないフリをしているのだ。
そうとも知らず、奴は、どんどんズレている。

フフフ…。
お間抜けな奴だ。
きっと僕がまだ騙されていると思っているんだろうな。

もう少しだ。
もう少しで、その時がくる。

お気付きだろうか。

やがて奴は、正確な時間を示してしまうのだ。
その時を狙って、電池をはずしてやる!
そんでもって、新品電池と交換してやるぅ!
そのひねくれた根性を叩き直してやるぅぅ!

しかし。
困った。

“その時”を知らせるべく家にある数多くの時計のうち、一体どれが、
正確なんだろう?