榎土敦之のコラム「風邪とおしゃれ」

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風邪とおしゃれ

マスクってのは、どうやってもあの形しかありえないのだろう。
あの、耳からビヨ~ンとのびたゴムと「今風邪引いてますねん」と周囲に訴え続けるような白いガーゼ。

今日出会った紳士も風邪らしく、遠くの方から挨拶代わりに「風邪ひいてます!」のいでたちでやってきた。

無論こちらは「おはようございます」ではなく、「風邪ですか?」と答えなければならない。
「そうなんだよね」と答える紳士。
「大丈夫ですか?」と、僕。
「大丈夫」と、彼。
まぁ、当たり前の会話を交わす。

いったいどうなんだろう。
マスクをしている人と会った時、必ずこういう会話が交わされる。
もう、マスクを見た時点で、会話の切り出しが決まってしまう。
それなら言わなきゃいいかもしれないが、さすがに日本人、そういう訳にはいかない。

なにせ、マスクとは顔にするものだからだ。
これがパンツのように穿くものだったら、こちらも気付かずにやり過ごすだろう。
余談ではあるが、咳とは口でするものでよかった。
もしパンツマスクを穿くような事態だと、咳き込んだ時に言い訳に困ってしまう。
失敬。

そう。マスクは顔にする。
ものすごい目立つ。
いきなりそこだけ目に付くので、どんな服だったのかを覚えていない。
ん~。ようやく今回の本題である。

「おしゃれ」との兼ね合い。
おそらく、マスクと「おしゃれ」は、対極に位置すると思われる。

まず「マスク」。
これは、風邪っぴきの象徴。暖かくしなきゃならん。
そして「おしゃれ」。
おしゃれとは快適を求めては、ありえない。
暖かさを求めると、センスが問われる。
季節は冬だ。
前者と後者。
両立はありえないのだ。

同時にした時。
もう、勝負は見えている。
そうマスクの圧勝だ。

結婚式のウエディングドレス。
女性にとっては最高の時であるが、もし、マスクをしたらどうだろう。
マスク、圧勝。

今日は口説き中のお姉ちゃんとのデート。
最高のおしゃれ。
見え張って借りた、ポルシェ。
口には、風邪ひいたので、マスク…。
マスク、圧勝。

しかし、これを逆に利用することができる。

例えば、10年ぶりの同窓会。
当時大好きだった彼女も来る。
おしゃれをしたいが、服を買いにいく時間がない。
そんなときに、マスク。
どうせ負け組のおしゃれなら、あえて勝組のマスクをコーディネート。
結果、どんな服でもよい、ということになるのではないか。

ならない?

まぁ。
ダラダラと書いちゃったけど、これをお読みの方で、マスク業界にお知り合いがいる方がいらっしゃったら、
どうか「おしゃれ」なマスクを考案して頂くよう、お伝え頂きたい。

その日が来るまで、僕はマスクをせず、電車でも菌を撒き散らす生活なのである。